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 02 - - - “かえりみち”
                      (from “SuNSeT and NiGHTFaLL”)


「目が覚めたかい?」

ぼやけた視界の向こう側から津村さんの声がする。目を開けるのが苦しい。脳が起きるのを拒否しているみたいだ。

「夕暮れの中で君は意識を失ったんだ。きっと夕暮れの毒気にあてられたんだ。でもそんなにひどくはないみたいだね」

「夕暮れの毒気、ですか」

ゆうぐれのどくけ。

不思議だ。夕暮れの中心で感じた吸い込まれるような恐さに、今ではなんだか親しみを感じている。ああいう冷たさが、あの夕暮れのなかにあったなんて――。

「それより、もう遅いから帰ったほうがいいよ。ほら」

時計の針は九時を回ったところだった。津村さんの言う通り私は帰ることにする。

「今日はほんとうにすいませんでした」

「気にしないで。また落ち着いたらいつでも声をかけてよ。いつでも夕暮れに連れてくから」

 

帰り道というのは、基本的に寒いものだと思う。春夏秋冬に関わらず、夜の帰り道は、寒いのだ。 スカートの下から入り込んでくる風は冷たい。夕暮れとは対照的な冷たさ。冷たさにもたくさんの種類があることを知った。

夜の帰り道はとても哀しい。夕暮れの毒気がまだ頭に残っているのか、少しぼうっとする頭をなんとか正気に戻して歩く。

よるのかえりみちは、とっても、かなしい。