「ねえ、私なんともなかったよ」
アリスにそう告げられた。ほっとする気持ちと、正体不明の恐ろしさが混じり合った気分になった。理由はわからなかった。これでアリスも夕暮れに入ることになるだろう。誘ったのは私だったが、今更になってこれでよかったのか、と悩んでしまう。
「いつ夕暮れに行く?」
アリスの問いかけに対してすぐに答えることができなかった。
「私はいつでもいいよ」
彼女の微笑みに、思わず私も微笑み返す。だけどそれは少しぎこちなかったかもしれない。自分の頬に張り付いた微弱な緊張が、解けずに残る。
「じゃあ、今週の金曜日はどうかな? 放課後なんだけど、もし空いてたら」「うん、空いてるから大丈夫だよ」「じゃあ、その日にしようよ」「おっけい」
アリスは笑う。だけど私は上手く笑うことができない。
柔らかくなることのできないまま、私たちは別れた。