modern age

world's end view...


・about
“No Monsters In Me”


・memo
“I'm Singin' In The Rain”


・log
“Serve The Servants”


・link
“There She Goes”


・top
“With Or Without You...”




 
 ・
 ・

 12 - - -  “夕暮れの宇宙誌”
     (from “SuNSet and NiGHTFaLL”)


アリスは時間通りにやってきた。私たちは夕暮れの前で津村さんを待つ。夕暮れの中からこの世界へと、赤黒い何かが染み出していた。それはけして触れることのできないもので、夕暮れの毒気に似た匂いをしている。

「遅いね、津村さん」

アリスが退屈そうにそう言った。「そうだね。遅いね」ぼそりと答える。私はどきどきしている。夕暮れの中に入るということにまだ慣れていないからだ。それに今日は、アリスも一緒だ。アリスの方は別に緊張などしていない様子で、ぼうっと遠くを見ているけれど。

「そういえば夕暮れって一体なんなんだろうね」

不意と、アリスがそう訊ねた。

「え」

「ほら、夕暮れって言葉は、一体何を指しているんだろう?」

アリスの質問の意味をすぐには理解することができず、私は回転の遅い頭を揺らしながら黙っていた。

しばらく、二人の間に沈黙が浮遊する。それをさっと振り払ったのはアリスの凛とした声色だった。

「なんだか、欠落の集合体のことを夕暮れって呼んでるのかな、って気がしたの」

相変わらず、アリスは遠くを見ていた。夕暮れよりもずっと遠く、宇宙の、さらに向こう。

私は何も答えることができなかった。ねえ、アリス。と呼びかけることさえもできないでいた。ただ、津村さんが来るのを、じっと待っていた。